VCPS(Video Content Protection System)はHewlett PackardとPhilipsで開発した
光ディスク用のコピーコントロールシステムで,DVD+R/RWで採用しているのはご存知の通りです。今回はVCPSに纏わる最近の話題をいくつか取り上げてみました。
一般に,このようなコンテンツ・コントロール時の技術要件は決まっていて,それを満たしていれば,基本的には,どのような方式でも承認されます。光ディスク関連ではVCPSと並んで,Blu-ray用にAACSが,DVD-R/-RW用にはCPRMが日本では承認されています。
この技術要件とは,簡単に言うと,
1) ディスクに収納するコンテンツは暗号化すること。
2) 暗号化につかう鍵は,ユーザーが変更出来ないようにディスクに収納すること。
3) 収納するディスクには識別番号を付けること。
4) 使用する記録機器のユーザーが特定出来るような仕組みを組み込むこと。
の4つです。
さて,以上の技術的要件を満たしても,もうひとつ関門があります。それは,このような著作権に纏わるシステムは,国ごとに異なる方針があって,我々ハードメーカー側は,その各々に国別に対応せねばならないのです。例えば,お隣の韓国では,デジタル放送が今年より始まり,現在5chのHigh Definition TV放送が,従来のアナログ放送と並行に送出されていますが,著作権に関する規制はありません。ですからこれらのHD放送の録画は自由で,韓国の皆さんはD-VHSを中心に,録画を楽しんでいるようです。DVDレコーダーの普及は,始まっておらず,HDD付きTVがSamsungやLGから発売されている程度なのだそうです。ちなみに現行のアナログ放送は日本より早く2009年に終了する予定です。CPRMやVCPSは必要ないのですね。
これに対して,日本はご存知のように“コピーワンス”の世界です。コピーは1回だけOKという現在の方式は,CDの著作権管理システムであるSCMS (Serial Copy Management System)から続いています。このような考え方を専門家はCOG (Copy Once Generation)方式と呼びます。もちろんVCPSやCPRMもCOGに準拠していますが,今これが日本では“まな板”の上に載せられています。と言いますのは,日本での地上波デジタル放送の普及がCOGのために遅々として進んでいないと言うのです。
さて,この詳細に入る前に,アメリカの状況はどうでしょうか?
彼の国では,もともと光ディスクにTV番組をコピーする習慣は無く,TV番組はSet top boxのようなHDDに一旦取り込み,後でまとめて見ると言う“Time shift”が一般的なようです。ところが,インターネットの盛んなこの国では,全てをインターネット経由で送ってしまう傾向があり,一時,音楽ファイルの交換アプリなぞが,新聞を騒がせたことは覚えておられるかと思います。現在の高速インターネットでは,TV番組のような動画も簡単に扱えるので,HDD上に取り込んだ番組を友人や,不特定多数の人々にインターネットでばらまく事が可能です。こうなると番組の放映権を持つTV放送会社としては黙っていられません。せっかくコストをかけて作った番組が,無断で垂れ流しされるわけですから。
このような背景によりアメリカでは,TV番組をインターネット経由で流すことに神経質になっています。そこで,彼らが考えたのが,特定の番組に放送局側でマークを付け,これがある番組はインターネットで流せないという仕組みでした。このマークを“Broadcast Flag”と言います。これが付いていると,仮に一旦光ディスクに録画されていても,その番組は,インターネットには乗せられません。ただし,ディスクから別のディスクへのコピーは自由です。このような考え方に基づく方式を EPN(Encryption Plus Non-assertion)と呼びます。暗号化はしなさい,しかし権利主張はそれ以上しません,というような意味でしょうか。そして我等がVCPSは,EPNにも対応しているのです。Broadcast Flagは早ければ今年にも実用化される予定だそうです。
それでは,日本で持ち上がっているCOGの問題とは何でしょうか?
すでにHDD付きDVDレコーダーをお持ちの方は経験されたかもしれませんが,TV番組をHDDに入れておいて,気にいった番組をDVDに焼こうとしたら番組が消えてしまったことはありませんか?これは本来MOVE(移動)と言って,その記録装置内でならOKとされている行為なのですが,DVDにうまく焼けたかどうかを確認する手段が確立されていないために,HDDからコンテンツが送り出されたら同時にHDD側のデータを消去してしまうために発生します。
もうひとつの事例は,教育の現場からの声です。教師は,しばしばTV番組から教材を作成して,授業で具体例として学生に見せるという方法を良く取ります。このとき,番組全てを見せるのではなく,要所要所をひろったダイジェスト版が作れれば良いのですが,一度,光ディスクに記録されたコンテンツは,それ以上編集のしようが無くなってしまうのです。
これらがCOGを採用している日本のHDデジタル放送の著作権管理システムの問題点として浮かびあがり,ひいてはTVのデジタル化の足を引っ張っているとさえ言われだしたのです。このような声に対して,総務省の情報通信委員会では,COGの見直しを進めています。そして現在,COGの代替として審議の中心となっているのが,EPNなのです。繰り返しますが,これはコピーは自由であるが,コピーしたものをインターネットに載せて第3者に送ってはならない,という仕組みです。ちなみにVCPSと並ぶ光ディスクの著作権管理システムのCPRMの現行バージョン(v0.94)ではEPNに未対応です。(CPRMは,光ディスクを全てCopy No More状態にしてしまいます)
最後に,i-Podに関連するお話をしましょう。世界的に普及したi-Podですが,ご存知のように使用上の制限があります。すなわち受信したコンテンツは受信機器上に固定され,それ以上のアクセスが不可能になっていますね。つまり,更にそれを光ディスクに焼いて保存するというような使い方が出来ません。これはインターネット経由でMPEG-2やMPEG-4のファイル伝送をする時のDRM(デジタルコンテンツの権利管理)が未だ不完全あるという見解からそうなっているのですが,VCPSは,このようなMPEGファイルの安全な光ディスクへのコピーという点でも評価され,それが出来るシステムであるとのお墨付きをもらっています。(i-Podがこれに気が付いて,採用してくれると良いですね)
以上,VCPSに関する最近の話題を,集めてみました。VCPSの技術詳細については,メンバーエリアに別途記載があります。すでにDVD+RWアライアンスのメンバーの方は,そちらも是非参考にされてください。
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